新・太陽神の都市 / 反・太陽神の都市 2010
新・太陽神の都市
「太陽神の都市」は1990年から開始されたプロジェクト「誘導都市/INDUCTION CITIES/INDUCTION DESIGN」のひとつで、「アルゴ(リズミック)デザイン/ALGODesign」の一環です。
「新・太陽神の都市」はその(公開を想定する)新版で、2つの異なるプログラム言語版があり、設定項目やインターフェースが更新されています。
「太陽神の都市」は、「光」を条件にして、ユニットが群れていくプログラムです。どのユニットも、指定時間以上の日照がないと存在できません。設計者は、敷地サイズ、可能な高さ(:階数に相当)、そして ユニットの全個数を決めます。生成されるユニットが既存ユニットに接することを条件にするか、接しなくても可とするか(:拘束条件)など、他の条件も選択します。
これらの条件を守りながら、ユニットが順に「群れ」をつくっていきます。ここで要求すること、つまり 「指定敷地と許容高さ内で、すべての指定ユニットが指定日照時間を満たすこと」は、「どうやってもできない」という場合も、あります。その場合は、可能な上限のユニット数の群れが生成されます。できる範囲で最善(のはず)の解答を出すということです。
反・太陽神の都市
一方「反・太陽神の都市」は「太陽神の都市」とは条件が反対です。ここではできるだけ「光が当たらない→熱を受けない」ことを条件にします。全ユニットの受光時間を指定値以下にしながら、指定個数のユニットの群れを「生成」するのです。そうすることで、エネルギー負荷を減らしながらも、自由度は高い、形態が生まれます。
どちらのプログラムでも、光という「単純」な規則から、単純ではない、「複雑」多様な「群れのかたち」が生まれます。生成されるかたちは、試行の度に毎回異なります。繰り返しはありません。それらはランダムのように(思いつきでユニットを並べたように)見えますが、でも、どれも、先程指定した条件は、きっちり守っているのです。
自由に遊んでいるようだけれど、仕事はちゃんとやっている、そういうかたちが、結果としての「設計」になります。ここでは、「設計」は、意思によって「つくられる」のではなく、意思によって定められた条件から、「生まれる」のです。
誘導都市
「要求条件を満たすために、規則的な形態で応える」、のは比較的容易です(難しいときもありますが)。一方、「要求条件を満たしながら、複雑多様な形態で応える」、のは難しそうに思えます。それを実現するには、複雑な方法が必要のように思えます。でも、実は方法は単純でできるのです。
少し間違いやすいのですが、ここでの目的は、「複雑」なかたちをつくること、ではありません。目的は、「多様」性を許容するかたちを生む、ことにあります。多様性の獲得の結果として、複雑になるのです。そしてその状態を含むシステムが、「複雑系」と呼ばれます。ちと、「複雑」。
これとこれを達成するためにはこういう形でなければならない、という制約や強制を、感じさせないような、自由なかたち。もちろんその自由の底流には規則が潜在しているのですが、その規則はふだんの(設計上などの)規則と違って、直接にこちらの行動を制御しない、これはダメと言ってこない、ので、規則がそこにあるとは感じられないのです。直接、ああしろこうしろと結果を操作することはせず、(コイルと磁石の距離を変えると誘導電流が発生するように、)間接的に結果を「誘導」する、それが「誘導都市」の方法です。
その方法により、「単純な方法で、要求条件を満たした、多様なかたちを生成すること」。それが「誘導都市」の機能です。
こうして生成された「太陽神の都市」の解答と「反・太陽神の都市」の解答は、一見、区別がつきません。光をできるだけ多く「受ける」ようにすることと、光をできるだけ「受けない」ようにすることは、同じような群れのかたちを生み出しています。正反対の(と思える)指示が、同じ(ように見える)かたちを「育てる」。
不思議?ですね。