FIBER WAVE-Ⅱ    2000

いま どこかで 吹いている風 が

「ファイバー ウエイブ Ⅱ」は、「ファイバー ウエイブ」の発展インドアバージョンで、仕組み、材質・サイズ、とも、異なっています。

ファイバー ウエイブが戸外の風や陽のひかりと反応するのに対して、ファイバー ウエイブⅡは、ウエブ上のデジタル環境と呼応することを前提にしています。
両者の共通項は、「風」を、目に見えるようにする、という点です。

FW-Ⅱは、任意の場所の風のリアルタイム情報(風向と風速)をインタネットから取り込み、データ処理の上、複数の送風機を組み合わせたシステムで、実際に「再現」します。
その場所のライブ画像も、同時にネットから取り込み、表示しています。
制御ソフト、ハードとも、このために開発されたオリジナルのシステムです。

風、は、都市だけに吹いているのではありません。
他の天体でも風は吹きますし、経済情勢も、風の一種と考えることができます。
そうした、「見えない風」も、ここでは見ることができます。

風というアナログな環境をデジタルデータに変え、それをまた空間というアナログな環境に戻します。

データに変えた時点で、リアルな場所、という意味が薄れます。
それを、ファイバーウエイブという、一本一本はデジタルな単位の変化で、視覚化します。
デジタルな単位ですが、その動きは、「しなり」、というアナログです。

デジタルとアナログ、リアルとバーチュアル、そのやりとりと変換の重ねあわせが、どちらでもない 「流体」環境を形成していきます。

選択可能な(今そこで吹いている)「風」

モニタ上で選んだ「都市」に、いま吹いている方向と強さの風がこの場所で吹く。

都市:
NEW YORK・LONDON・PARIS・MOSCOW・ALASKA・BUFFALO・KUOPIO

他の天体:
太陽風(2日ごとに更新)・木星(推定値)

通貨レート:
ドル・ユーロ

実際の風速データには、場所により異なった係数をかけて変換しています。
風に与える揺らぎ関数も、場所・状況により変わります。

展覧会カタログより

風は見えない。
肌に感じられても、眼には見えない。
しかし、樹々のそよぐ姿から、風の存在に気づく。
梢は、風の視覚化装置として機能している。
「ファイバー ウエイブ」は、人工の梢である。

木々は、しなる。
柔らかく撓んで、風をやり過ごす。風と戦わない。
戦わないが、負けはしない。風が止めば、元の姿を取り戻す。
人のつくるものは、そうは行かない。いつも戦っている。
建物も橋も塔も。
硬く、強く、雄々しく風に立ち向かい、そして、ときに壊れる。
「ファイバー ウエイブ」は、違う。戦わない。樹々に近い。
自分のカタチを変えて、風との関係を取り結ぶ、人工の植物。
風が決める、自分のかたち。デザインレス・デザイン。

そして、「ファイバー ウエイブ Ⅱ」は、光でもある。
そよぐ、ひかり。

ひかりをそよがせるのは、この場所の風ではない。
どこか、ほかの世界で、いま、吹いている、風。
海の向こうで、遠い砂漠で、暑い街で。
緑の惑星で、赤い星で、凍ったメタンの海で。
ネットのどこかで。
その風が、見える。いま、ここで。

テクノロジ、生物、ネット、
その融合。

都市を溶かす、流体の手触り。