ファイバー ウエイブ1995-
- 1998
- iFデザイン賞 トップ10(最高賞) (独)
- 1997
- 北米照明学会賞 (米国)
- 1997
- 都市景観大賞(景観形成事例部門) (日本)
- 1996
- IALD国際照明賞 (米国)
デザインなしのデザイン
人工生命
しなやかなものをつくりたいと思った。
風にざわめく木々。
波のように風の渡る草原。
生物は、地に根ざした植物でも、けしてじっとしてはいない。
風や雨や、温度や光に応じて、姿勢や姿や形を変える。
自分の回りの空間の状況に、最もエネルギーの少ない姿勢をとって立つ。
生物学の教えるところによれば、自然は無駄遣いしない。
最大効率の道を選択する。
無駄のない、そして真摯な、生きることへの意志が、見るものに素直な快感を与える。生き物の美しさは、この仕組みによってもたらされる。
そうした初源的な美しさを持った存在を人の手でつくり出すこと、それがここでの目的であった。
非戦闘的構造体
建築は戦う。
地震に対して戦う。風に対して戦う。時間に対して戦う。建築は戦うことで持続する。
一方、植物は戦わない。
草は地震では折れないし、風に倒されず、時間に漂って持続する。
受ける力を受け流し、しかも壊れない。
そういう、植物のように、戦わずに生きていく人工物をつくりたいと思った。
自然の生き物の仕組みを、人の手で「つくろう」とするとき、そこに用いられるのは人の手になるテクノロジーである。
カーボンファイバー、太陽電池、そして高輝度発光ダイオード。
草原のように風に揺れるロッドと、蛍のように飛び交う青い光。
目に見える風
風は見えない。風そのものは透明で、眼に見えない。
風は、何かを動かすことで見えるようになる。
そよぐ枝が、風を見せる。
水面の波紋が、風を見えるようにする。
ファイバー ウエイブは、「見えない風」を、視覚化する装置である。
デザインレス デザイン
その動きは、設計者が指示したものではない。
指示したのは、風の強さに対応する撓み率と、ロッドの配列だけである。
動きという「形」は、デザインしていない。
設計したのは、物性と配列、という「コード」だけだ。
デザインなしのデザイン。
形は、自然の「法則」が決定する。あたかも、「都市」がそうであるように。
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