FIBER TOWER 2004

「昨日の」都市 / 過去から学ぶこと

街並みの原理から/ 多様性を生かした統一

こうした歴史都市から学ぶべきもののひとつは、連続した街並みをつくり出している原理である。
敷地周囲の建築は概ね、上中下の三層で構成されている。また各建物の高さに大きな違いはない。そうした「規則」は厳密なものではなく、各層の分割方法や軒高には建物ごとに違いがあり、スカイラインを含めて水平のラインは必ずしも通ってはいない。
しかし、その緩やかな規則のおかげで、全体としての街並みに統一感が生まれている。
今回の建築では、この「緩やかな水平層」という規則を受け継ぐことにした。
ミラノは全体が厳しい規則で統一された街ではない。それにも関わらず、ミラノらしさという統一感がある。多様性を許しながら、調和もかなえている。
すべてを同じ規則で厳密に揃えるのではなく、それぞれの違いを許容しながら全体で「なんとなく揃う」、という、ミラノの街並みの特性を抽出して再利用することで、新しいが、それでいて街に同化する建築が生まれる。

街角の広場 / 地上は開放すること

もうひとつは、Plazaの伝統である。この敷地は道路が集中する交差点であり、こうした結節点の多くには広場がつくられてきた。
近年、小さな広場は駐車場と化すことが多いが、街に人間のための広場をつくることは、この街の伝統である。
そこでこの敷地の地表面は広場として解放する。
施設空間は閉じた箱にせず、空中に浮かぶことで、地面は誰でもいつでも入れる広場となり、また多くの活動の舞台として機能する。

際立つのに、街に溶け込むこと

さらに、今回の建築はミラノの過去から学ぶだけではない。
ミラノの未来の中心のひとつとして、新たなモニュメントとなることが求められた。
しかし、ミラノにはドゥオモを初め多くのモニュメントがある。これらと競うカタチをつくることはせずに、際立つが、同時に街に溶け込む、という、一見相反する性格を合わせ持つような、新世代のモニュメントを求めた。
風にそよぐ細い光の束のようなFiber structureは、その存在をしっかり主張しながら、背後の景色が透けて見える。
陽の光の反射や夜のライトによる表情、内部の活動による形や透明度の変化、そして風にそよぐ架構の姿は、これまでにない視界を提供する。
在るようでいてないような、見えるのに見えないような、そういう新しい景観を生成することを期待した。

「明日の」都市 /「柔らかい」建築

そよぐ架構:Fiber Structure/非静定構造体

Fiber Structureは「非静定」構造体である。
従来の普通の構造は、動かないことを条件にしている。
強い風が吹いても動かない、地震が来ても動かず耐える、そのために大きく太い構造が必要になる。

これに対し、Fiber Structureは風が吹けばしなり、地震がくれば動く。
しかし、その動きはアクティブダンパーが吸収する。
コンピュータ制御の各ダンパーが常時、動きに対応し、ひとの居る空間は動かない。外周の構造は外力に呼応して動くが、中の空間はいつも静止している。

従来の静的構造のように外力に抵抗していると、抵抗しきれない大きな力が働けば壊れてしまう。しかし、active structureであるFiber Structureは、動くことで外力を逃がすため、より大きな力にも対応できる。
自然という外力に対して戦うのではなく、外力を逃がすことでよりよい結果をえる方が、より高次の方法だ。(戦闘、ではなく、協調、すること)

呼吸するBubble / 機能する皮膜

内部の空間はBubbleと呼ばれる。
それは変形可能なelastic材料/架構で構成され、Fiber structureからアクティブダンパーで支持されて浮かんでいる。

内部の活動の内容や条件に応じてBubbleは変形し、あるときは大きな塊に、あるときは細長く、またあるときはいくつかのスペースにくびれた状態に変化する。
Bubbleの内部の床は螺旋系に連続して、変化に対応する。
Bubbleの表面は外界と呼応して反応する、「機能皮膜」である。

液晶を挟んだプラスチックによる表面素材の透明度は内部の活動によって変わり、あるいは映像スクリーンとなって、街行くひとびととリアルタイムで呼応する。
可変空間のBubbleと可変構造体のFiber structureの組み合わせにより、生体のように「呼吸する」建築が生まれる。

Plazaの地下にはホールが設けられ、その一部は地表に膨らんで、その上から内部を見通せる。最上階には小さなBubbleが浮遊し、レストランとして使われる。屋上は浮かぶ庭園であり、緑の間から街が見渡せる。

この施設はミラノの新しい文化発信体として、また、ふと立ち寄ってしばらく過ごす場所として、あるいはデザイン都市ミラノの歴史的建築物以外の観光スポットとして、そして歴史都市への新しい建築の解答のひとつとして、この街とその住民と来訪者に、貢献できるものになるだろう。

このプロジェクトは、現代文化施設の(意外に)少ない「デザイン都市」ミラノに、新しい文化支援施設を提示しようとするもの。
そのための展覧会 Hyper Link Tower展 は、2004年4月のミラノサローネ時に、ロシア/フランスのデザイン誌MONITORの主催で開催