紀田 順一郎 (本書一帯より)
壮大な想像力、溢れ出るイメージに、さわやかで明晰な文体がひとつに溶け合って、私たちの待望していた新しい表現の分野が開かれた。
出版の形態から見ればデジタル出版だが、建築界の俊秀によって創造されたこの表現は、これまでの電子書籍とは一線を画している。
立原道造は「すべての建築は結果において廃墟となる。ゆえに建築は廃墟までを想定して構築されねばならぬ」という意味のことを述べたが、この緻密に構築された未来志向の都市イメージには、有機的なものの誕生から死に至るまでの全プロセスが含まれる。
読者はそれらのイメージや文章によって、自己完結的な想念を紡ぐのではなく、より自由かつ奔放に、著者の用意する、多重的、複合的なシステムと遊びたわむれ、「もうひとつの世界」に分け入ることができる。
かくて決定論的な世界の束縛から解き放たれた画像や文章はさまざまな形に溶融し、あるいは分解し、新たな空間が 形づくられていく。その過程で私たちは本格的な電子読書時代の開幕を実感する。
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第一章:「ガラスはいつも流れ・飴色の部屋」 1998-2020 → 英訳版(訳:AI+著者) 第六章:「塔の島・光の月」 1998-2020 → 英訳版(訳:AI+著者)