FIBER WAVE     1995-

デザインなしのデザイン

人工生命

しなやかなものをつくりたいと思った。
風にざわめく木々。
波のように風の渡る草原。

生物は、地に根ざした植物でも、けしてじっとしてはいない。
風や雨や、温度や光に応じて、姿勢や姿や形を変える。
自分の回りの空間の状況に、最もエネルギーの少ない姿勢をとって立つ。
生物学の教えるところによれば、自然は無駄遣いしない。
最大効率の道を選択する。
無駄のない、そして真摯な、生きることへの意志が、見るものに素直な快感を与える。生き物の美しさは、この仕組みによってもたらされる。
そうした初源的な美しさを持った存在を人の手でつくり出すこと、それがここでの目的であった。

非戦闘的構造体

建築は戦う。 地震に対して戦う。風に対して戦う。時間に対して戦う。建築は戦うことで持続する。
一方、植物は戦わない。
草は地震では折れないし、風に倒されず、時間に漂って持続する。
受ける力を受け流し、しかも壊れない。
そういう、植物のように、戦わずに生きていく人工物をつくりたいと思った。

自然の生き物の仕組みを、人の手で「つくろう」とするとき、そこに用いられるのは人の手になるテクノロジーである。
カーボンファイバー、太陽電池、そして高輝度発光ダイオード。
草原のように風に揺れるロッドと、蛍のように飛び交う青い光。

目に見える風

風は見えない。風そのものは透明で、眼に見えない。
風は、何かを動かすことで見えるようになる。
そよぐ枝が、風を見せる。
水面の波紋が、風を見えるようにする。

ファイバー ウエイブは、「見えない風」を、視覚化する装置である。

デザインレス デザイン

その動きは、設計者が指示したものではない。

指示したのは、風の強さに対応する撓み率と、ロッドの配列だけである。
動きという「形」は、デザインしていない。

設計したのは、物性と配列、という「コード」だけだ。
デザインなしのデザイン。

形は、自然の「法則」が決定する。あたかも、「都市」がそうであるように。